旅行先などで,印象的な情景を写真に収めた際,自身が肉眼で捉えた風景と,写真に記録された風景との間に大きな違和感を覚えることがある.この現象は,人間の視知覚とカメラの投影モデルの特性の違いが原因のひとつであると考えられる.人間は風景のなかで興味ある対象を部分的に強調しながら捉えているのに対し,一般的なカメラは風景全体を平等に捉える.よって,写真を介して主観的な印象や感動を他者に効果的に伝えることは易しいことではない.このような課題は現実シーンだけでなく,仮想シーンでも同様に存在する.多様な体験が可能なメタバースにおいて,効果的にユーザの感動を共有することはひじょうに重要な課題である.本論文では,仮想シーンにおけるユーザの注目部分を拡大処理した画像を自動出力するシステム DVF(Digitus ViewFinder)を提案する.注目部分の指定にハンドジェスチャを用いることで,ユーザは没入感を損なわずに,自身が捉えた情景に近いシーン画像を得ることができる.評価実験の結果,我々は仮想シーンにおける拡大率に関する新たな知見を得,それらの特性を反映させた拡大率関数の推定と応用機能の実現に関する見込みが得られた.
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