概要

映像表現では,鑑賞者の認知を効果的に誘導する演出が大きな役割を担います.これについて,手描きアニメでは独自に様式化された表現方法が見られます.特に描画の詳細度を映像内で緻密に制御する技法は,奥行き感の誇張や対象の強調といった視覚効果を生み出すうえで重要だと考えます.しかし,その詳細度設計の多くは制作者の経験則や暗黙知に依存しており,これに関する研究や議論は十分とはいえません.そこで,本研究ではその設計の流れを整理し,アニメに様式化された詳細度をパラメトリックに制御する対話的計算モデルの構築を目指しています.

本研究では,手描きアニメに見られる詳細度制御に影響する要素のなかで,図1 に示すような (a) 視点からの距離による大局的要因,(b)各対象の奥行き構造による局所的要因,(c) 対象の重要度の三つに着目しています.特に(c) は,主人公やモブキャラクタといった,対象の注目度合いを表すため,複数対象の関係性から定まる点で大局的である一方,各対象固有の情報である点で局所的でもあります.これら三項目を考慮して,画面上の詳細度分布を決定する制御過程と,その分布に基づいて元画面の詳細度を下げて結果画像を得る描画過程の二段階から成るフレームワークを構成しています.

図1 本研究で注目する詳細度の制御要因.(a) はシーン全体の環境から定まる大局的要因,(b) は対象固有の情報から定まる局所的要因,(c) は大局的・局所的双方の性質をもつ要因である

図2 提案手法の適用例

メンバ

背景色が灰色のメンバは現在はプロジェクトに関わっていないメンバです。現在も藤代研究室に所属しているメンバは名前の前に藤代研のアイコンがついています。

名前現在の所属ホームページ
青野 誠大慶應義塾大学
福里 司早稲田大学

業績

下線が引いてある著者は藤代研究室所属している/所属していたメンバーです。

発表

発表(査読あり)

  1. 青野 誠大,福里 司,藤代 一成:「アニメに様式化された詳細度制御: 誇張表現に向けた対話的計算モデルの提案」,芸術科学会 NICOGRAPH 2025,発表予稿集,pp. S-14:1–S-14:4,県立広島大学 サテライトキャンパスひろしま, 2025年12月2日

発表(査読なし)

  1. 青野 誠大藤代 一成:「セルルックアニメ制作に向けた詳細度制御モデルの提案」,映像表現・芸術科学フォーラム2025予稿集(映像情報メディア学会技術報告,Vol.49,No.10, pp.377–380,AIT2025–146)東京工芸大学中野キャンパス(東京都中野区),2025年3月10日,優秀ポスタ発表賞・企業賞(StudioGOONEYS)受賞
  2. 青野 誠大藤代 一成:「セルルックアニメ制作のための詳細度制御モデルの提案」,情報処理学会第87回全国大会(立命館大学),6S–07 (講演論文集(2), pp. 503–504),2025年3月15日,学生奨励賞 受賞

資金

  1. 挑戦的研究 (萌芽) :23K18468 (2023-)

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