概要

ポートレートイラストは,主に人物の全身やバストアップが描かれたイラストや絵画をさす.アニメや漫画などに登場する人物キャラクタのファンアートや,小説の挿絵や装画,ソーシャルゲームや広告など多岐にわたって使用される.このポートレートイラストにおいて,主役である人物の背後にはさまざまな背景が描かれる.なかでも,円,四角形,三角形などの抽象的な図形が平面的に配置される特徴的なスタイルの背景が存在する.なぜならば,比較的シンプルで洗練された印象を与えながら,主役である人物を引き立てることができるからである.また,図形のレイアウトや配色次第で多様なパターンの背景を作ることができ,幅拡い表現が可能である.一方で,主役を強調するように図形のレイアウトや配色を調整するには,アーティストのセンスや経験,多大な労力を要する.

本研究では,この背景を補完的背景と名付け,対話型遺伝的アルゴリズムを用いてそれを半自動的に生成するシステムを提案する.補完的背景は,図形の色,テクスチャ,形状,レイアウトなどに関する最適化問題に帰着できる.対話型遺伝的アルゴリズムでは,遺伝子操作を繰り返すなかで,適合度の評価などにユーザが介入することで,意図を反映した最適化が可能になる.そして,遺伝子を一部変化させる突然変異や,遺伝子をかけ合わせる交叉により,早期に収束することなく多様な背景パターンが生成可能である.

本論文では,ユーザが対話的に操作しながら補完的背景を生成可能なシステムを提案した.そこでは,ユーザは主に適合度を評価し,個体群の特徴や世代交代による変化を俯瞰し,状況に合わせて遺伝子操作を繰り返すことで,自身の意図を反映した補完的背景生成機能を実現した.

本研究により,入力したキャラクタイラストを引き立てるのに効果的な補完的背景を生成できた.また評価実験を行った結果,生成AI と比較して本システムはよりキャラクタを引き立てる背景を生成できることがわかった.また,本システムを用いることで,ユーザの感性を刺激しながら,自身の嗜好を反映した補完的背景を生成できることがわかった.

 入力画像(左)と、本システムにより背景を生成した結果(右)

メンバ

背景色が灰色のメンバは現在はプロジェクトに関わっていないメンバです。現在も藤代研究室に所属しているメンバは名前の前に藤代研のアイコンがついています。

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小林智哉慶應義塾大学

資金

  1. 挑戦的研究(開拓):20K20481 (2020―2023)

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