概要
近年,GPUはグラフィックスだけでなく,数値計算や機械学習などの汎用計算にも利用されています.GPUが命令を実行する際の一般的なアーキテクチャでは,CPUから命令を転送する必要があります.そのため,GPUの計算速度が向上するにつれ,命令転送のコストがオーバーヘッドとなってきました.そこで,CPUの介入を極力減らした処理を実現する,GPU駆動の計算パラダイムが登場しました.
GPU駆動の既存機能である間接命令は,GPU上のバッファに実行したい命令を書き込んでおくことで,命令転送コストの削減が可能です.しかし,この機能では,バッファに書き込む命令の種類を変更できないために,GPU上での計算結果に基づいた命令の呼分けに弱いという欠点があります
このような背景から,新たに登場したのがGPU work graphという機能です.こちらの機能では,GPUで実行したい命令群と命令間の依存関係をグラフとして表現します.GPUはグラフを参照することで,依存関係を解決しながら新しい命令を次々と実行できます.
本研究では,流体シミュレーションとその解像度制御の処理に対してGPU work graphを利用しました.流体シミュレーションに対しては,高速化のためGPUの活用が進んでいます.また,さらなる高速化のために,シミュレーションの離散化間隔を調整する解像度制御の研究が行われています.この処理はシミュレーションの状態に応じた処理の分岐が必要であり,GPUでの効率的な実装が困難です.この問題に対してGPU work graphを利用することで,効率的な実装を試みています

(a),(b)はシミュレーションを可視化した結果.開始直後は小さなタイムステップが設定され
流れが落ち着くと大きなタイムステップが設定される.
(c)は実装したGPU work graphを用いたグラフ構成
メンバ
背景色が灰色のメンバは現在はプロジェクトに関わっていないメンバです。現在も藤代研究室に所属しているメンバは名前の前に藤代研のアイコンがついています。
業績
下線が引いてある著者は藤代研究室所属している/所属していたメンバーです。
発表
発表(査読なし)
- 宮下 慧悟,杉田 俊平, 藤代 一成:「GPU work graphを用いたSPHによる流体シミュレーションの時間解像度制御」情報処理学会研究報告(株式会社エクサウィザーズ),Vol. 2025–CG–197,No. 1,pp. 1-6,2025年3月5–6日
- 宮下 慧悟,杉田 俊平,藤代 一成:「GPU work graphを用いた流体シミュレーションの適応的解像度制御」,情報処理学会第87回全国大会(立命館大学,ハイブリッド開催),2025年3月15日
資金
基盤研究 (A) :21H04916 (2021-)