概要

著名な画家や写真家の作品制作では,作品の主役を強調しながら,その周囲にも観察者の視線を誘導し,作品の隅々まで鑑賞させることが意識されています.この手法としてリーディングラインとよばれる視線経路を構図内に含ませることがありますが,これは明確な線だけでなく,間隔を空けておかれたものの並びや,グラデーション,筆遣い等を抽象化したものであることも多いです.このようなリーディングラインは,美術教育を受けた経験がない観察者には認識しづらいですが,リーディングラインの特定による作品構造の理解は,鑑賞内容を客観化する効果があり,鑑賞教育の面でも重要な意味をもつとされています.また,作者側も長い制作時間の経過とともに,自身の作品に目が慣れ,リーディングラインの判別ができなくなってしまう問題もあります.

静止画に対する誘目測度として,一般的には顕著度が用いられ,広告のデザインや,メディアの美質評価,医用画像の解析など幅広い分野で注目されてきました.しかし顕著度のようなスカラ特徴量では視線の流れが表現されません.

そこで本研究では,リーディングラインの視覚分析手法として,顕著性マップから得られた Morse–Smale 複体のうち,maximumグラフとよばれる,極大点と鞍点だけを連結する部分グラフを用います.このように顕著度の勾配場を抽象化することで,アマチュアの制作者や美術鑑賞方法を学びたい人を対象に,リーディングラインを同定する手法を提案します.

入力画像
Still-life With Quince, Cabbage, Melon, and Cucumber (Juan Sánchez Cotán, c. 1602)
出力される
Morse–Smale 複体の部分グラフ (maximum グラフ)

 

メンバ

背景色が灰色のメンバは現在はプロジェクトに関わっていないメンバです。現在も藤代研究室に所属しているメンバは名前の前に藤代研のアイコンがついています。

名前現在の所属ホームページ
柴﨑 史典慶應義塾大学

業績

下線が引いてある著者は藤代研究室所属している/所属していたメンバーです。

発表

発表(査読あり)

  1. Fuminori Shibasaki and Issei Fujishiro: “Topological analysis and approximate identification of leading lines in artworks based on discrete Morse theory,” in 2023 IEEE Visualization and Visual Analytics (VIS), short paper, pp. 6–10, Melbourne, Australia, October 22–27, 2023, doi: 10.1109/VIS54172.2023.00010.
  2. 柴﨑 史典藤代 一成:「離散モース理論に基づくアート作品のリーディングラインの位相解析」(ショート発表),Visual Computing 2023 予稿集,pp. 4:1–4:5,芝浦工業大学豊洲キャンパス,2023 年9 月17 日–20 日

発表(査読なし)

  1. 柴﨑 史典藤代 一成:「微分位相幾何学に基づくリーディングラインの視覚分析と視線追跡結果の比較」,映像表現・芸術科学フォーラム2023 予稿集(映像情報メディア学会技術報告,Vol. 47,No. 9,pp. 89–92,AIT2023–59),東京工芸大学中野キャンパス(東京都中野区),ハイブリット,2023 年3 月6 日,優秀口頭発表賞・企業賞(ポリフォニー・デジタル)受賞
  2. 柴﨑 史典藤代 一成:「微分位相幾何学に基づく静止画における視線誘導方策の視覚分析」,情報処理学会第85回全国大会講演論文集,Vol. 2,pp. 939–940(7X-01),電気通信大学,ハイブリッド,2023 年3 月2 日–4 日,学生奨励賞受賞

賞罰

柴﨑 史典第26回 優秀研究発表賞,「微分位相幾何学に基づくリーディングラインの視覚分析と視線追跡結果の比較」,映像情報メディア学会 冬季大会,2023 年12 月26 日受賞

資金

  1. 挑戦的研究(萌芽):23K18468 (2023―)
  2. 挑戦的研究(開拓):20K20481 (2022―2023)

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