概要
世界中で大きな問題となっている大気汚染の原因である黄砂やPM2.5といった粒子は,大気エアロゾルとよばれています.それらの物質は人間の健康に影響を与えるだけでなく,視程や大気の色合いにも大きな影響を及ぼします.現実世界では,視程は航空をはじめとする交通分野で重要な指標であり,日本では2019年まで気象庁による目視での視程測定が行われてきました.それ以降は自動測定が導入されたものの,モデルの精度に課題があり,必ずしも信頼性が高いとはいえません.そのため,CGで視程変化を再現することには大きな意義があります.また,黄砂が多く浮遊している場合,大気は黄色みがかって見え,PM2.5が多く浮遊している場合,大気は灰色っぽく見えるなど,大気中の汚染物質によって,大気の色合いも異なって見えます.
大気エアロゾルの分布は,Polarization Optical Particle Counter(偏光光散乱式粒子測定器,POPC)による測定が行われています.POPCでは,粒径,粒子数,粒子の偏光特性を測定し,粒径と偏光特性から粒子の組成を人為起源粒子,鉱物粒子,海塩粒子の3種類に分類します.
本研究では,POPCで測定された粒子組成と粒子数から,空気中の大気エアロゾルによって光が散乱または吸収される割合である消散係数を計算することで,粒径分布に応じて変化する遠景の再現を試みています.

4種類の粒子組成分布に基づき遠景を描画した結果を示します.
粒子組成分布によって見えが異なることが確認できます
メンバ
背景色が灰色のメンバは現在はプロジェクトに関わっていないメンバです。現在も藤代研究室に所属しているメンバは名前の前に藤代研のアイコンがついています。
業績
下線が引いてある著者は藤代研究室所属している/所属していたメンバーです。
発表
発表(査読なし)
- 大貫 誉,小林 拓,横田 壮真,藤代 一成:「大気エアロゾル粒径分布を考慮した視程変化の再現」,情報処理学会第87回全国大会(立命館大学,ハイブリッド開催),5S-01 (講演論文集(2), pp. 473―474),2025年3月14日
- 大貫 誉,横田 壮真,小林 拓,藤代 一成:「大気エアロゾルの粒径分布を考慮した遠景の再現」,情報処理学会研究報告(早稲田大学),Vol. 2025–CG–199,No. 9,pp. 1-6,2025年9月9日,優秀研究発表賞 受賞
資金
基盤研究 (A) :21H04916 (2021-)