概要

近年,メタバースという単語が浸透するにつれて,バーチャル空間での体験が注目されています.バーチャル空間でのユーザの没入感を高めるためには,バーチャル空間と現実空間での表現力の乖離が少ないことが重要です.そのため,現実の特定の物体や現象を再現するリアリティモデリングがバーチャル空間と現実空間の表現力の調和に必要です.また,物体や現象を再現する際には,ユーザの意図を考慮するデザインシステムがバーチャル空間の構築において重要となります.

ここで,布は日常生活に必要不可欠であることから,常にリアリティモデリングの対象として注目度が高い素材です.布は織物や編物などの生地に分類され,布ごとに異なる特有の表面の風合いが確認できます.中でも,編物に該当する縦編みレースは,柄の縁や多彩な疎密パタンを強調する表現が得意です.上記のようなレースの特徴に注目し,画像変換などを通したレーステクスチャのデザイン手法は存在しますが,糸の密集度によって発生する張力分布の考慮が無いため,レース全体が均一となり,無機質な印象を与える画像となることが多いです.また,レーステクスチャをデザインする際には,三次元上の縦編みレースの構造を考慮に入れないため,マテリアルパラメタとなる透過度マップや環境遮蔽マップなどが除かれていることが多いです.

そこで本研究では,柄イラストなどの原画像を元に,糸の張力分布を考慮に入れた縦編みレースの風合いをもったマテリアルパラメタのテクスチャを生成する手法を提案します.生成されたマテリアルパラメタをバーチャル空間上のオブジェクトにテクスチャマッピングすることで,より写実的なシーンを作成することができます.

本研究によって得られたテクスチャをカーテンの三次元モデルにテクスチャマッピング し,日常的なシーン内に配置した結果

Reality Modeling Triangle上の位置づけ

本研究は,縦編みレースを表現する際に重要となる要素を示す,「縦編みレースの風合い」に着目します.この「縦編みレースの風合い」を表現する時、不必要となる計算量が大きい、厳密な物理的な計算を実行せず,各要素をモデル化した計算を実行するため,本研究はAtrificialに近い位置づけとなります.

メンバ

下線が引いてある著者は藤代研究室所属しているメンバです.

名前 現在の所属 ホームページ
多田 一輝 慶應義塾大学

国内発表

  1. 多田 一輝藤代 一成:「縦編みレースの特徴抽出とラッピングを考慮した画像変換デザイン」,第7回 ADADA Japan 学術大会,No. 34,オンライン,2021年10月8日
  2. 多田 一輝藤代 一成:「画像変換デザインに基づく縦編みレースの三次元モデル生成」,情報処理学会第83回全国大会講演論文集(4),pp. 81―82(6Y-07),オンライン,2021年3月18日―20日

資金

  1. 基盤研究(A):21H04916 (2021-2023)
  2. 基盤研究(A):17H00737 (2020-2021)

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